その日、そろばん教室でクリスマス会の飾りつけをしていると、寛子さんは「先生、私も手伝ってあげる」と手を差し伸べてくれました。
いつものように明るく元気な様子で、何も変わったところはないように見えました。
しかしその翌日、彼女は逝ってしまったのです。
「もう、だれも、いじめないで」という悲痛なメッセージを残して。
学校という集団の中で起こる陰湿ないじめ。
生徒を追い詰め、死を選ばせてしまう恐ろしい社会問題です。
死の前日、あれほど明るく振舞っていた生徒が、なぜ何も言わずに逝ってしまったのか─
当時、私は親しく接していた教え子の死に衝撃を受け、彼女の苦しみとSOSに全く気付かなかった自分を責め続けました。
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